建設業界の給料が「安い」と言われる背景には、重層下請け構造や長時間労働といった業界特有の事情があります。一方で、国はこうした状況を変えようと、技能者の経験・資格を可視化する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を通じた処遇改善を進めており、実際のデータを見ると資格取得やキャリアアップによって収入を伸ばせる仕組みも整いつつあります。
本記事では、給料が安いと言われる理由と、収入を上げていくための対策を整理します。
建設業界の給料が「安い」と言われる理由
建設業界の給料が安いと言われる最大の理由のひとつが、「重層下請け構造」です。建設現場では、発注者から元請け企業が仕事を受注し、そこから一次下請け、二次下請けへと仕事が流れていくのが一般的です。
各段階で管理費や利益が差し引かれるため、実際に現場で作業する技能者に届く賃金が、工事全体の金額に比べて薄まりやすい構造になっています。
また、建設業は天候や受注状況によって仕事量が変動しやすく、繁忙期と閑散期の差が大きい業界でもあります。
日給制の会社では、現場が休みになるとその分の収入が減るため、月々の収入が安定しにくいという事情も、「給料が安い」という印象につながっています。
さらに、建設業は職種・地域・企業規模による給与の差が大きいことも特徴です。
大手ゼネコンの正社員と、地方の中小工務店の作業員とでは、同じ「建設業」という括りでも待遇が大きく異なります。
ひとくちに「建設業は給料が安い」と語られがちですが、実際には会社選び次第で状況が大きく変わる業界だという点も押さえておきたいポイントです。
労働時間の長さも一因に

日本建設業連合会の統計によると、建設業の年間実労働時間は、全産業平均より約237時間長いと報告されています。年間出勤日数も235日で、全産業平均より26日多くなっています。
年収を単純に比較するだけでなく、実際に働いている時間の長さを考慮すると、建設業の「時間あたりの賃金」は、額面の年収差以上に見劣りしてしまう側面があることが分かります。
公共工事の労務単価の仕組みから見る「給料が届きにくい」構造
国土交通省が示す資料によると、公共工事の技能者に支払われるべき「公共工事設計労務単価」のうち、技能者本人が実際に受け取る基本給・手当・賞与に相当する部分(実物給与)は全体の約59%にとどまり、残りの約41%は法定福利費や現場の安全管理費など、事業主が負担すべき必要経費にあてられる仕組みになっています。
労務単価そのものは決して低くないにもかかわらず、その全額が技能者の手取りになるわけではないという構造も、給料が安いと感じられる背景のひとつです。
この仕組みは、日給制のアルバイトなどの「日当」とは異なり、法定福利費(社会保険料の事業主負担分など)まで含めて設計されている点がポイントです。
つまり、労務単価がそのまま手取り額として支払われるわけではなく、事業主側が負担すべきコストも含んだ金額として設定されています。
国土交通省は、下請け企業がこの必要経費分を計上しない、あるいは値引くことは不当な行為にあたるとし、標準見積書の活用などを業界団体に呼びかけています。
出典:国土交通省「建設キャリアアップシステム(CCUS)におけるレベル別年収の公表」
実際のデータで見る建設業の賃金水準

国土交通省は2023年、技能者の経験・資格を4段階で評価する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」にもとづき、レベル別の年収試算を公表しました。全国全分野の平均では、経験の浅いレベル1(下位〜中位)が374万〜501万円、中堅のレベル2が569万円、職長クラスのレベル3が628万円、高度な技能を持つレベル4(中位〜上位)は707万〜877万円という試算です。
とび職を例に見ると、レベル1(下位〜中位)368万〜494万円に対し、レベル4(中位〜上位)は544万〜851万円と、経験・資格に応じて大きく収入が伸びる設計になっています。
「建設業は給料が上がらない」というイメージとは異なり、経験を重ねて評価される仕組みそのものは用意されていることが、この試算からうかがえます。
出典:国土交通省「建設キャリアアップシステム(CCUS)におけるレベル別年収の公表」
国が進める処遇改善の取り組み
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者一人ひとりの資格・社会保険加入状況・現場での就業履歴を業界横断的に登録・蓄積し、経験や技能に応じた適正な処遇につなげることを目的とした国の仕組みです。
就業履歴がシステムに蓄積されることで、転職した場合でも、それまでの経験・レベルが引き継がれる点が特徴です。
国はこの仕組みの普及を通じて、若い世代が将来のキャリアパスと収入の見通しを持てる業界を目指すとしています。
これまでの建設業界では、「経験や技術力があっても、それを客観的に証明する手段が乏しい」という課題がありました。
CCUSは、現場での就業履歴をカードリーダー等で記録し、経験年数や保有資格をもとにレベル1〜4で評価する仕組みを整えることで、この課題に対応しようとしています。
転職の際にも、それまでの評価を新しい会社に引き継げるため、「一から評価をやり直される」という不安を減らせる点も、技能者にとってのメリットです。
未経験からでも収入を上げていくための対策

給料を上げていくために有効なのが、資格取得と会社選びです。玉掛けや小型移動式クレーンといった現場でよく使う資格から、施工管理技士のような上位資格まで、取得することで資格手当がつく企業は少なくありません。
また、CCUSのレベル評価を導入している会社を選べば、経験・資格が客観的に可視化され、昇給の根拠にもなりやすくなります。
資格取得の費用や講習を会社が全額負担してくれる制度がある会社を選ぶことも、実質的な収入アップにつながります。
求人票に「資格取得支援あり」と書かれていても、対象となる資格の範囲や、費用負担の割合は会社によって差があるため、面接時に具体的な内容を確認しておくとよいでしょう。
収入面で頭打ちを感じていた前職から建設業界へ転職し、月3〜5万円ほど収入が上がりました。残業代がしっかり支給される点や、資格手当がある点は想定以上でした。体力仕事ではありますが、待遇面は満足しています。
求人を比較する際は、基本給だけでなく、資格手当・残業代の支給実態・法定福利費の負担状況まで確認することをおすすめします。
建設業界全体の未経験転職の進め方は建設業界への未経験転職を解説した記事、転職エージェントの活用は建設業界の転職エージェント無料相談を解説した記事もあわせてご覧ください。
建設業界の給料に関するよくある質問
- 建設業界の給料は本当に安いのですか?
-
重層下請け構造や労働時間の長さから「安い」という印象を持たれやすい業界です。ただし、経験・資格に応じて収入が伸びる仕組みも整っており、資格取得や会社選び次第で収入を上げていくことは可能です。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)とは何ですか?
-
技能者の資格・社会保険加入状況・現場での就業履歴を業界横断的に登録・蓄積し、経験や技能に応じた適正な処遇につなげることを目的とした国の仕組みです。転職しても経験・レベルが引き継がれる点が特徴です。
- なぜ重層下請け構造だと給料が上がりにくいのですか?
-
元請けから一次下請け、二次下請けへと仕事が流れる過程で、各段階の管理費・利益が差し引かれるため、末端で作業する技能者に届く賃金が薄まりやすいためです。
- 未経験から収入を上げるにはどうすればいいですか?
-
玉掛けや施工管理技士などの資格取得、CCUSのレベル評価を導入している会社を選ぶこと、残業代や資格手当の支給実態を求人段階で確認することが有効です。
資格取得の費用や講習を会社が負担してくれる制度があるかどうかも、実質的な収入アップにつながる重要なチェックポイントです。
- 建設業界の労働時間は本当に長いのですか?
-
日本建設業連合会の統計では、建設業の年間実労働時間は全産業平均より約237時間長いと報告されています。年収だけでなく、時間あたりの賃金という視点でも確認しておくとよいでしょう。
まとめ:建設業界の給料は「構造」を理解すれば対策できる
建設業界の給料が安いと言われる背景には、重層下請け構造・長時間労働・繁閑差といった業界特有の事情があります。
ただし、国が進めるCCUSによる処遇改善の動きや、資格取得によって収入を伸ばせる仕組みも整いつつあり、給料の構造を理解したうえで会社選び・資格取得を進めることが、収入アップへの近道です。求人を比較する際は、基本給だけでなく資格手当や残業代の支給実態まで確認してみてください。
「建設業=給料が安い」という漠然としたイメージだけで判断せず、会社ごとの実際の処遇や、CCUSレベル評価の導入状況まで踏み込んで比較することが、納得のいく転職につながります。
建設業界に限らず、業界のイメージと実際の待遇には差があることが少なくありません。
求人票の額面だけで判断せず、資格手当・残業代・福利厚生まで含めた総支給額のイメージを持って比較することをおすすめします。
掲載している統計データは調査時点のものです。
本記事は公的統計データおよび取材内容をもとにブルーカラーの教科書編集部が作成しています。







